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2.2.決算整理仕訳

投稿日:2019年10月9日 更新日:

今回は決算整理仕訳について説明していきます。

決算整理仕訳は、年度末に(月締めでやる場合には月末にも)実施する仕訳です。
貸借の科目と金額を記載する要領は通常の仕訳と一緒です。

通常の仕訳と異なるのは、

  • 既に発生していて、記録済みの仕訳をもう一度整理する
  • まだ発生していないが、発生する見込みが高い取引を記録する

という2点です。

この決算整理仕訳を理解するために重要な概念が「期間損益計算」ですので、まずはここから説明していきます。

その上で、決算整理仕訳でよく出てくる仕訳について簡単に説明していきます。
なお、各仕訳の解説はかなり重たい内容になっています。いずれ別の投稿に切り出してしっかりと解説していこうと思っています。

 

 

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期間損益計算

企業会計にとって重要なことは、一定期間における損益を正しく把握して報告することです。

”一定期間における損益”というのがポイントです。

事例を見ながら考えていきましょう。

実現主義

ケーススタディ1:前払での売上

ある不動産会社が、3年間の契約で商店Aにテナントを貸して、その家賃を前払いで受け取ったとします。

単純に考えるために、3年分の家賃が7,200,000円、不動産会社の販管費等の経費が毎年1,000,000円とします。

まず、お金のやり取りのタイミングで売上や費用を計上したらどうなるでしょうか。

成り行きで家賃を計上した場合

1年目は黒字絶好調、2年目以降急に赤字転落になってしまいました。

違和感がありませんか?

では、売上の計上を実態に基づいてやってみましょう。

期間按分して家賃を計上した場合

3年分の家賃がきちんと3年間に分割されて計上され、損益も実態に適したものになりました。

 

収益は実現した時点で認識する

ケーススタディ1で見たように、実態に適した時期に収益を認識することを、実現主義と言います。

売上は実現した時点で計上しましょう、という話で終われば簡単ですが、そもそも実現とはなんでしょうか。

これは以下2つの要件を満たした時点とされています。

  1. 財貨又は役務を提供した
  2. その対価として現金等価物(現金や債権など)を収受した

ケーススタディ1で考えると、1年目の時点では、現金等価物の収受はあったものの、財貨又は役務の提供は1年分だけです。
よって、1年分の家賃収益に関しては実現していると考え、計上できます。
2年目以降については、各年の財貨又は役務の提供が発生し、かつ対価の収受は既に実現しているため、各年分の収益が実現したと考えられれます。

このように、収益はまず実現しているかどうかで考えることが重要です。

 

費用収益対応原則

次に、費用について同じく事例を見ながら考えていきましょう

ケーススタディ2:仕入の収益対応

例えば、ある商店で1年目に10,000,000円分の商品を仕入れたとします。

これが1年目の間に半分売れて、2年目に残り半分が売れたとしましょう。
売上高はそれぞれ7,000,000円(合計14,000,000円)だったとします。

仕入と販売の時系列

①成り行きで計算した場合

成り行きで、仕入れたときに仕入を計上して、売れたときに売上を計上したらどうなるでしょうか。

成り行きで仕入を計上した場合

1年目の損益が△3,000,000円、2年目の損益が7,000,000円となります。
1年目の大赤字から一転して2年目は黒字、少し変ですよね?

 

②期間損益をきちんと計算した場合

期間損益計算を踏まえて、もう一度計算してみましょう。

費用収益対応で仕入を計上した場合

1年目、2年目ともに損益が2,000,000円です。
これなら、納得できるのではないでしょうか。

 

費用収益対応の原則

上記ケーススタディのように、売れたという事実に対して、それに紐づく費用を計上する。
これを費用収益対応の原則と言います。

 

 

商品・製品の棚卸

まずは商品と製品の棚卸です。

これは、上記ケーススタディ2で紹介したものですね。

仕入という費用については、売上が実現したタイミングで、対応する分を費用として計上する必要があります。

現実には、

  • 去年仕入れて今年の年初に在庫に残っていた商品(期首繰越商品)
  • 今年仕入れた商品(当期仕入高)

があり、かつ年末には

  • 今年売れた商品(当期売上原価)
  • まだ売れていない商品(期末繰越商品)

があります。

これを箱図にすると下記のようになります。

商品の繰越

期首繰越商品+当期仕入高=当期売上原価+期末繰越商品

という等式で考えます。

このうち、費用として計上して良いのは当期売上原価です。

今年売れた分の仕入れ値だけを、費用として計上する。今年の末にまだ売れていない商品は費用には計上しない(在庫=資産として計上する)ということです。

よって、決算整理仕訳では、期首繰越商品の分を仕入に計上し、期末繰越商品を仕入から減算することで、当期の売上原価を算出します。

仕訳にすると以下のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 x,xxx 期首商品繰越高 x,xxx
期末商品繰越高 y,yyy 仕入 y,yyy

 

 

未収収益・未払費用ほか

次に、未収収益・未払費用などについて説明していきます。

これは、通常の仕訳では認識していなかったけれど、実際には今期の収益・費用に繰り入れなくてはいけないものを計上していきます。

下図のように多くの勘定がありますが、ここでは未収収益を題材に解説していきます。
他の勘定については、後日まとめて別記事で取り扱う予定です。

貸借 支払い時期 サービス 対価
前払金 資産 前払 受ける
前払費用 資産 前払 受ける
未収金 資産 後払 提供する
未収収益 資産 後払 提供する
前受金 債務 前払 提供する
前受収益 債務 前払 提供する
未払金 債務 後払 受ける
未払費用 債務 後払 受ける

 

さて、未収収益についてですが、これは一定の契約に基づいて継続して役務の提供を行う場合で、かつ期末時点ですでに一部の役務提供を行っているものの、対価を収受していない収益を計上するための科目です。

さっき説明した実現主義に反する(対価を収受していない)じゃないか、と思われるかもしれませんが、ここでポイントとなるのが「一定の契約に基づいて継続して」というところです。
契約で何時までにどういった役務を提供して、その代金はいくらで、ということが決められていることから、「まあおおよそ確定しているよね」ということで、期間損益の計算を重視して繰り入れます。

事例で考えてみましょう。

ある不動産会社は、商店Aに建物を貸しています。月々の家賃は200,000円で、2か月に一度払う契約としています。
10月・11月分の家賃は既に振り込まれていますが、12月分の家賃は来年1月に振り込まれるとした場合には、12月分の家賃はまだ受け取っていないものの、今年の収益として認識する必要があります。

よって、下記のような仕訳を期末に計上します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
未収収益 x,xxx 家賃収入 x,xxx

 

 

減価償却費

簿記の勉強を始めると、減価償却費でつまづく人も結構いるんではないでしょうか。
しかしながら、減価償却費も期間損益計算の考え方を踏まえると理解しやすいかと思います。
まず事例から見ていきます。

ケースステディ3:機械の購入代金はいつ費用になる?

ある工場が機械を6,000,000円で購入しました。
この機械は6年間使うことが出来て、毎年2,000,000円分の製品を作ることが出来ます。
6年後、機械は使い物にならなくなります。当然、中古で販売することも出来ず、処分します。

機械の取得と生産

では、機械の購入代金6,000,000円はいつ費用にするべきでしょうか。

  1. 買ったときに計上する
  2. 処分するときに計上する
  3. 使える期間(6年間)に分けて計上する

ここまで読んでいただいた方には予想がついているかと思いますが、正解は3番の「使える期間(6年間)に分けて計上する」です。
この機械は6年間使えるものですから、その間製造した製品の売上に対応して費用にしていかなくてはいけません。(費用収益対応の原則

よって、3の「使える期間(6年間)に分けて計上する」という方法で費用にしていきます。

これが減価償却です。

ちなみに仕訳にするとこんな感じです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 x,xxx 減価償却累計額 x,xxx

減価償却費として費用にしてきた金額は、減価償却累計額という勘定科目に加算していきます。
※財務諸表では差引金額を記載することもありますが、その場合には注記というコメント部分で減価償却累計額の内訳を説明するのが基本です。

なお、減価償却には耐用年数や償却方法についていろいろとお作法がありますが、それについては別の投稿で説明していきたいと思います。

 

 

引当金

減価償却費もさらに厄介なのが引当金です。

まず、Wikipediaで定義を見てみましょう。

引当金(ひきあてきん、英: reserve)とは、将来の特定の支出や損失に備えるために、貸借対照表の負債の部(または資産の部の評価勘定)に繰り入れられる金額をいう。

「貸借対照表」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2019年2月3日 (日) 00:26 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/貸借対照表

何を言っているのかわかる人はおそらくこの投稿を見ていないでしょう。

ポイントは「将来の特定の支出や損失に備える」です。

これを理解するにあたって、発生主義の原則というキーワードに触れておきます。

発生主義の原則

これは収益認識の基準、実現主義の原則と対をなす概念です。

収益については、実現した段階で認識しましょう、となっている一方、費用については発生した段階で認識しましょうとなっているわけです。

発生、とは次のいずれかを満たす場合を指します。

  • 価値費消事実の発生
  • 価値費消原因事実の発生

何言っているか分かりませんね。解説していきます。

価値費消事実

これは経済価値が減った事実、ということです。
お金が減った、資産を手放した、そういった分かりやすい支出のことを価値費消事実と難しく表現しています。

 

価値費消原因事実

こちらが分かりづらいですね。

これは、上記で説明した価値費消事実の原因となる事実を指します。
単純にお金を払った等だけではなく、将来的にお金を払う必要がある理由(=原因)が発生したら、もう費用として認識しましょう、ということです。

これが引当金の計上に影響してきます。

 

なぜ発生主義なのか

※ちょっとしたコラムです。
ところで、なぜ収益は実現主義なのに、費用は発生主義なのでしょうか。

これは、保守的な会計をしましょうね、という約束事に基づいています。

保守的、とはリスクは適正に評価しましょうということです。
なぜ収益は実現主義なのかと言えば、万が一、取引先が倒産してしまったらお金が入ってきませんから、実際にお金が入ってくるまで収益として計上するのは控えましょうというのが理由です。
収益が実現しないリスクを認めています。

一方で費用が発生主義なのは、払わなくてはいけないという債務はまだ発生していないけれど、発生することがほぼ確実に分かっているのであれば、それを利害関係者に知らせるために計上しましょうということです。費用が発生するリスクを認めています。

このような理由から、収益と費用とで認識の基準が異なるわけです。

 

発生主義? 費用収益対応の原則?

※引き続きコラムです。

冒頭で費用は収益に対応させると言いましたが、厳密にはちょっと違います。

費用は、”発生主義で認識”し”費用収益対応の原則で計上”することとなっています。
つまり、発生した時点で費用としては認識するのだけれど、その費用が収益などに紐づくもので、しかもその収益が来年度以降のものであれば、それは来年度以降に繰り越しておきましょう、ということです。

商品の仕入もこれを踏まえると分かりやすいです。
まず、当期に仕入をしたのであれば、発生主義の原則でそれを計上します。
次に、期末時点で在庫が残っていれば、それは来期以降の売上に対応させる必要がありますので、その分を来年度以降に繰り越します。これが期末繰越商品を仕入高から減算する理由です。

まとめると

  • 収益:実現主義で認識する
  • 費用:発生主義で認識し、費用収益対応の原則に基づいて適切に期間配分する

となります。

 

引当金は将来の支出・損失に備える=価値費消原因事実を認識する

発生主義の原則を踏まえて、貸倒引当金を題材に引当金について説明していきます。

貸倒引当金とは、将来の取引先の倒産リスクに備えて計上される引当金です。

基本的に会社は”継続的に事業活動を行う”と仮定されています。
取引先が来年倒産するかもしれないと考えながら物を売ったりお金を貸す人はなかなかいませんよね。

しかし、現実的には会社は倒産します。
倒産すれば、その会社に対する債権(売掛金や貸付金)は回収できないことがままあります。
一部が回収できても、やっぱり全部は無理だった、ということもよくあります。

このような、”取引先が倒産する”=”お金が回収できなくなる”リスクに備えて計上するのが貸倒引当金です。

そしてこの”お金が回収できなくなるリスク”がいつ発生しているかと言えば、それは債権(売掛金や貸付金)が計上されたタイミングです。

取引先のX社が倒産して売掛金10,000,000円が回収できない、という損失が発生したとします。

その損失のリスクはいつ生じていたかと言えば、そもそもX社に対して商品を掛け取引で販売したタイミングです。(価値費消原因事実)
そういうわけで、売掛金や受取手形がある=取引先の倒産リスクがあると認識して、あらかじめ債権を計上したタイミングで倒産による損失を見込んでおく意味で貸倒引当金が計上されます。

実際の仕訳は以下の通りです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
貸倒引当金繰入額 x,xxx 貸倒引当金 x,xxx

貸倒引当金繰入額という費用が計上され貸倒引当金という資産(のマイナス)勘定が相手科目として置かれています。

貸倒引当金繰入額は、上で説明した通り、倒産による損失の原因は当期に債権を計上したことにあるのだから、あらかじめ費用に入れておこう、ということです。

対して、貸借平均の原理に則ると何かしらの相手勘定を置かないといけないため、じゃあ費用(貸倒引当金)の原因になった債権(資産)のマイナスとして置いておこうじゃないか、という勘定です。

 

以上が決算整理仕訳の概要と、よく出てくる仕訳の解説です。

なかなか分かりづらい概念が多かったと思いますので、後日別途解説ページを作っていこうと思います。

次回は総勘定元帳の作成です。だいぶマイルドになります。

 

 

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次>> 2.3.総勘定元帳の作成

 

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