日々の経済取引を記録するにあたっては、貸借それぞれに勘定科目を置き金額を記入していく(仕訳を切る)ことは既にご説明しました。
今回は、仕訳を積み上げた結果として作成する、報告資料、すなわち財務諸表について説明していきます。
なお、財務諸表にはすでに説明した通り下記4種
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- キャッシュフロー計算書
が存在しますが、今回はもっとも基本となる貸借対照表と損益計算書について説明します。
(日商簿記3級では株主資本等変動計算書とキャッシュフロー計算書は対象範囲外となっていることからも、この2つが基本であることをご理解いただけるかと思います)
貸借対照表と損益計算書の定義
まずはWikipediaから貸借対照表と損益計算書のそれぞれの定義を引用します。
貸借対照表は、企業のある一定時点における資産、負債、純資産の状態を表すために複式簿記と呼ばれる手法により損益計算書などと同時に作成され、その企業の株主、債権者その他利害関係者に経営状態に関する情報を提供する。
「貸借対照表」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2019年7月27日 (土) 10:06 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/貸借対照表
企業のある一定期間における収益(revenue)と費用(expense)の状態を表すために、複式簿記で記録されたデータを集計することによって、貸借対照表などと同時に作成される。
「損益計算書」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2019年2月3日 (日) 02:40 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/損益計算書
いくつかのキーワードがありますが、まずは対象となる時間が異なる点に気を付けてください。
時間が異なる:一定時点と一定期間
貸借対照表は「ある一定時点」、損益計算書は「ある一定期間」の状態を示すものであると書かれています。
例えば、1月1日から12月31日までを会計期間とする場合であれば、期末の決算時に作成される貸借対照表、損益計算書はそれぞれ
- 貸借対照表:12月31日現在の資産・負債・純資産の残高
- 損益計算書:1月1日から12月31日までの収益・費用の合計
が示されることになります。
貸借一致を分解すると貸借対照表と損益計算書になる
続いて、貸借対照表と損益計算書の対象となる科目について説明します。
貸借平均の原則を思い出してください。下記の等式です。
資産+費用=負債+純資産+収益
5つの項目をすべて一つの表にすると、下記のようになります。
これを「財政状態を示すもの」と「収支状態を示すもの」に分解したものが貸借対照表と損益計算書です。
それぞれ、隙間があることに注目してください。
これが、損益計算書の算定期間における利益(損失)額です。
この隙間部分について、時間を追って見ていきましょう。
開始時点
再度、1月1日から12月31日を会計期間とする場合で考えます。
まず、x1年1月1日、会計期間開始時点での図を見てください。
貸借対照表は、この時点での残高を示しています。
損益計算書は、期間累計を示すものですから、開始時点ではすべて0円です。(取引が発生していない)
期中
会計期間の間、様々な取引が発生することで、各勘定が動いていきます
まず、商品を仕入れたとしましょう。
勘定図は次のように変化します。
掛け取引で商品を買ったので、負債(買掛金)と費用(仕入)が増加しています。
次に、仕入れた商品が売れたとしたら、さらに勘定図は変化し、次のようになります。
仕入れた商品を現金で売りましたので、資産(現金)と収益(売上)が増加しています。
このように、期中の取引に応じて各科目が増減していきます。
期末
では、12月31日まで一気に時間を進めていきましょう
1年間の取引が積み重なった結果として、損益計算書の収益・費用が発生しています。
また、その差額である損益も生じています。
貸借対照表と損益計算書に分けた結果として見える損益の部分は、お互いに埋めてあげましょう。
貸借対照表の場合には「純資産」の中の「繰越利益剰余金」、損益計算書の場合には「当期純利益」として考えます。
※純資産の主要な項目として「出資金(株主資本)」「準備金」「剰余金」などがあります。このうち、「剰余金」が「これまで稼いで貯めてきた資本」、つまり純利益の合計額となります。
そのため、当期純利益も「剰余金」に算入されます。
翌期首
最後に、年を越してx2年の1月1日時点ではどうなるか見てみましょう。
再び、貸借対照表勘定のみが残りました。
昨年度に発生した純利益は、純資産の中に含まれています。
また、損益計算書は「ある一定期間」の状態を示すものですから、次の期間に入れば数字はリセット、0になります。
以上が、財務諸表の中でも特に基本的な「貸借対照表」と「損益計算書」の概要になります。
それぞれの細かい科目等については、次回以降で説明していきます。
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